I様が奥様と離婚したのは、一人息子がまだ幼い頃でした。以来、I様は息子と二人だけで暮らしてきました。別れた奥様の消息は時がたつに従って聞かなくなり、今ではどこで暮らしているのか全く分かりません。そんな中、残念なことに息子さんが先に亡くなってしまいました。息子さんは生涯独身であったため、子供がいないので相続人は親です。つまり相続の手続きには息子さんにとっては母親である別れた元妻の関与がどうしても必要になってしまったのです。
I様は戸籍を追いかけたり、今では疎遠となった親戚筋等との連絡を試みたり、さまざまな手段を使って探されたのですが、別れた奥様の消息は分かりませんでした。結局、不在者の財産管理人の制度を利用して、財産管理人に遺産分割協議をする特別の権限を付与してもらい、なんとか遺産分割協議まで成立させました。大変な時間と費用がかかりましたが、相続手続きをあきらめて放置せざるを得ない事態は回避できたので良かったと言えます。ただ、もし息子さんの相続財産がこれほどの苦労に見合わなかった場合、どのような結論になっていたか不明です。